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恋色恋味

ハヤトとアズサが険悪な雰囲気を漂わせている。おかげで室内の空気が悪い。
「何だアイツら、ケンカしたのか?」
ツラヌキがアキタに聞いた。
「昨日のことを思い出してみろ。」
昨日は大宮にミクが来ていた。ハヤトとミクが仲良さげに会話しているのが、アズサにとっては嫌だったのだ。
「わけわかんねぇ。」
ツラヌキは呟いた。
「別にハヤトとミクが仲良かろうが、上田には関係ねぇだろ?」
「読み切れてないな。それが嫌なのだ。まぁ、『妬いた』というとこだろう。」
「まったくもってわかんねぇけど……俺たちで何とかしてやろうぜ!」
「こういう問題は本人たちが解決した方がいいのだが……上田には気になることもあるし、仕方ない。」
アキタはアズサの方へ向かった。
「アズサ。」
「へ?」
アキタに名前を呼ばれた事に驚き、アズサは顔を上げた。アキタは無言で顔を近づけた。アキタの額とアズサの額がつく。間近で見る美少年に、アズサはどぎまぎした。
少しして、アキタは顔を離した。
「やはり……こいつ熱がある。」
「「はぁ!?」」「ええっ!?」
「昨日あの後、傘ささずに帰ったのか。」
アキタが呆れて呟いた。
「別にこれくらい、どうってこないわよ!くしゅんっ。」
言いながら、アズサはくしゃみをした。
「とりあえず、今日はもう帰れ。ほら。」
アキタは背中を向けた。アズサを背負うためだ。
「いいわよ。一人で帰れるし。」
「つまらぬ意地をはるな。」
「……わかったわ。」
アズサはアキタの背中に乗った。あまり重くない。
「悪いツラヌキ、俺と上田の荷物、運んでくれ。」
「お、おう。」
「じゃあなハヤト。お前も風邪には気をつけろよ。」
「……あ、うん。」
三人は部屋を出た。
「良かったでございますか〜?」
シャショットがハヤトに聞いた。
「……別に。俺には関係ないし。」
そうだ、関係ないのだ。別に二人が仲良くしていても。なのに何だろう。このモヤモヤする気持ちは……

同じ頃。
三人は研究所のスタッフの視線を集めながら歩いていた。
「なぁ上田。お前ハヤトと仲直りしろよ。」
「ツラヌキっ……!」
こういうのは、第三者が介入しない方がいい。
「嫌よ。っていうか、ケンカしてないし。」
「でも何も無いわけじゃねぇだろ?今日二人全然喋ってなかったし。何かあるんだったら俺にも言えよ。仲間だろ?」
よいしょっ、とツラヌキは荷物を持ち替え笑顔を向けた。
「嫌よ。あんた口軽そうだし。」
「それは言えてるな。」
アキタが賛同する。
「なっ、何だよ!そんなに俺口軽くねぇよ!二人そろって!」
ツラヌキが少し怒ったそぶりを見せた。
と、アズサの重みが増したように、アキタは感じた。寝息が聞こえる。
少し歩いて、アキタは呟いた。
「失敗した。」
「何がだ?」
「俺が上田に手を出せば、ハヤトは止めに入るだろうと思っていた。」
「ああー!だから上田のことを名前で呼んだり、おぶったりしたのか!」
「声がでかい。上田が起きる。」
案の定、アズサは身じろぎした。幸い起きてはいないようだ。
と、背負っているアズサの顔が少しだけ見えた。微かに甘い花のような香りがした。
「…………ッ!」
急に鼓動が高鳴る。
鋭いアキタは、すぐに気づいてしまった。自分の気持ちに。これは……これは……!
「アキタ、どうした?」
急に立ち止まったアキタに、ツラヌキが声を掛けた。
「何でもない。」
アキタはすぐに歩き出す。
胸の鼓動は、収まらなかった。

アズサを家に送り届け、アキタとツラヌキは寮に戻った。
夕飯を食べ風呂に入り、寝る時間となった。
ツラヌキはすぐにいびきをかいて寝始めたが、アキタはなかなか眠れなかった。
知っていたのだ。
アキタは思った。
知っていた。上田が他の女子より顔がよくて、やるべき事はちゃんとやって、何だかんだいって自分たちのサポートをしてくれていることを。
気づかないふりをしていただけで、実はずっと、好きだったのではないだろうか。
しかし、どちらにせよ諦めなくてはならない。
アズサはハヤトが好きだからこそ、ミクに嫉妬したのだ。
二人の邪魔をしてはならない。
アキタはため息をついた。
とりあえず、今日はもう寝よう……

次の日。
アズサは超進化研究所に来なかった。どうやら熱がまだ下がらないようだ。
今日はいつも以上にアキタが黙っていた。ハヤトの機嫌もそんな良くない。
「どうしだ?」
昨日は早く帰ってしまったシノブが聞いた。
「まったくもってわかんねぇ……」
まず、アキタが黙っているのがわからない。昨日帰ってからもほとんど喋ってなかった。というか、どこか上の空だった。
ハヤトに関しては、今日はアズサもいないので、普段の調子に戻ると思っていたのだ。
とりあえず二人とも、調子が良くないという事は、今日のシミュレーターの結果から察せられた。
ずっと黙っている二人、元から口数の少ないシノブに挟まれて、ツラヌキの限界がくるのも時間の問題だった。
「あー!もう黙ってないで何か言えよ!」
ツラヌキが立ち上がって叫んだ。
「どうしたのツラヌキ君!?」
ツラヌキの叫び声を聞いて、指導長代理のフタバが駆け込んで来た。
「フタバの姐ちゃん!ハヤトとアキタの様子がおかしーんだよ!ぜってー何かあるだろ!言えよ!」
「そういえば二人とも、今日のシミュレーターの結果が良くなかった……。何かあったの?」
「「…………。」」
二人とも押し黙っている。
「ほら、二人ともこんな調子なんだ。」
「昨日何があっだか?」
シノブが聞いた。
と、ツラヌキがシノブに耳打ちした。
「ハヤトは、上田と仲直り出来てないのが原因だと思うぜ。」
「アズサと?何が原因で?」
「んーっと、確か上田がミクに妬いたとか何とか……本人たちはケンカじゃないって言い張ってるけどな。」
「よぐわがんね……アキタは?」
「俺もそっちはわかんねぇんだ。昨日の夜からこうなんだ。」
と、その時フタバが言った。
「わかりました。明日はみんなお休みにします。」
「「「「はぁ!?」」」」
「二人がこの状態では、シミュレーターでいい結果が出なくて、結果、敵との戦いで失敗してしまいます。なので、明日はお休みにして、気持ちの整理をする時間にします。」
「そんなっ……!今日は調子が上がらなかっただけだ!きっと明日は……!」
「俺は賛成だ。」
アキタを遮って、ツラヌキが言った。
「お前らおかしいぞ?休んだ方がいいぜ。」
「おらも同じ。」
「それじゃあ明日はゆっくり休むこと。これは、ツラヌキ君もシノブ君も同じね。」
「ああ!俺が二人をゆっくり休ましてやるからな!俺の好きな四文字熟語は、『疲労回復』だ!」

「え?」
次の日の午前10時。
「みんな、今日はいないんですか?」
熱が下がったアズサは、超進化研究所に来ていた。
が、もちろん四人はいない。
「うん。……昨日のシミュレーターの結果がみんな悪くってね。今日はお休みにしたの。それに、夏休みなのにずっと研究所通いっていうのも、どうかと思って。宿題も、あるだろうしね。アズサちゃんも、病み上がりなんだし、今日は休んだら?」
「そうします。……どうりでハヤトの部屋のカーテンが閉まってたのね。教えてくれてもいいじゃない。」
フタバは曖昧に微笑んだのだった。

同じ頃。
アキタは寮で、愛用の銃を磨いている……はずだった。ツラヌキに指摘されるまでは。
「アキタ。おいアキタ。」
ツラヌキがアキタを軽く揺さぶる。
「何だ。」
「それ銃じゃなくて傘だぞ。」
「は……?」
アキタが一生懸命磨いていたのは、愛用の銃ではなく、傘だった。
「やっぱお前変だぞ?なんかあったんなら話してくれよ。」
「……できない。」
こんなこと相談できない。
「そうか。……よし、行くぞ。」
そんなアキタを見かね、ツラヌキは言った。
「は?どこにだ?」
ツラヌキはニヤリと笑って言った。
「夏なんだから、あそこしかねぇだろ!」

「ひゃー!さすがに人たくさんいるなー!」
ツラヌキは手をかざし、言った。
「……ちょっと待て。」
準備体操を始めたツラヌキに、アキタは言った。
「なぜ、プールに来る必要がある!?」
ツラヌキはチッチッチッと人差し指を振った。
「夏と言やぁプールだろ。今年は海には行ったけど、プールには行けてなかったからな!」
「いや、お前宿題終わっていないだろう!」
「そんなん後、後!さあ泳ぐぜ〜!」
ツラヌキは勢いよくプールに飛び込んだ。
「待て!飛び込んだら、危ないだろう!」
アキタもプールに入る。
競い合うように50mプールでひとしきり泳いだ後、二人は疲れたのでただ流されるだけの流れるプールに入った。
流れるプールで流されながら、アキタは思った。
俺は、何をしているんだろう。
宿題は終わっているとして、運転士としての腕を磨くため、いくら研究所が休みといえどシミュレーターをやらなくてはならない。銃の腕もなまらせないように、練習しなくてはならない。
考え事をしていたら、人にぶつかってしまった。
「すいませっ……あっ!」
「あら、アキタじゃない!」
ぶつかったのは、アキタが悩んでいる原因である、アズサだった。クラスの女子もいる。
アキタは目をそらした。アズサの水着姿を見るのは初めてではないが、いつもより露出した肌に頰が火照る。
その時、アズサが人に押された。
「ひゃっ。」
思わずアキタにしがみつく。
「……ッ!」
触れる肌に、アキタの胸の鼓動は高鳴った。
「おー、上田たちも来てたのか!」
アキタがいないことに気づいたツラヌキが、プールサイドを歩いてきた。
「そうだ!せっかくだし、みんなで泳ごうぜ!」
ツラヌキが突然言った。
「はっ……!?」
アキタはたじろいた。
「いや、駄目だろう!」
「何でだよ。」
「未成年の男女が、こんな格好で一緒にいるのはまずい……!」
「ごちゃごちゃうるせぇな。」
「なっ……!」
「お前らは、それでいいよな?」
「賛成!」
「二人と話してみたかったの!」
アキタは余計焦った。
諦めようとしていたのに……
やはり変なアキタを横目に見ながら、ツラヌキはアズサに耳打ちした。
「あいつ、おとといから様子が変なんだ。どうにかしてくれねぇか?」
「オッケー。まかしときなさい!」
アズサは振り返って言った。
「みんな!スライダー行かない?」
「うん!」
「よーし、じゃあ行こ!……アキタもね!」
アズサはアキタの手首を掴んだ。
「えっ。」
アキタの顔が赤くなった。数人の女子の間で、もしかして……という予感がしていた。

はあ…………っ。
アキタは再びため息をついた。
夜。入浴も済ませ、今は自由時間だ。アキタはプールから帰ってからというもの、ため息ばかりついている。
「なあアキタ。お前、ますます変だぞ?」
ツラヌキがベッドに寝転んでいるアキタを覗き込んだ。
「もしかして、泳ぎたくなかったのか?」
アキタは首を振っただけだった。
「じゃあ、暑かったのか?」
またもアキタは首を振った。この暑さにはもう慣れた。
「もしかして……上田たちに会っちまったからか?」
アキタが飛び起きた。
「わっ。……図星か?」
アキタは首を振らなかった。耳もほんのり赤い。それが答えだ。
「なんでだ?今日は別に動画撮影手伝わされたわけじゃねぇし……嫌なことでもされたか?」
アキタは首を横に振った。上田は人の嫌がることをするやつじゃない。まぁ、迷惑なことはするが。
「じゃあ、上田が好きとか?いや、それはねぇか。好きなやつと会ったら、嬉しいらしいし。……ん?」
ツラヌキが見ると、アキタが真っ赤になっていた。
「もしかして……これも図星か?」
アキタは仕方なく頷いた。
よりによって、こんなやつに知られてしまった。
アキタは絶望感に襲われる。
「でも、何でだよ。」
ツラヌキの言葉に、アキタは顔を上げた。
「好きなやつと会ったら、嬉しいんじゃねぇのか?」
「それは……」
このことを伝えていいのか。
一瞬、ためらう。
「上田が、ハヤトを好きだからだ。」
「は?」
ツラヌキは何を言われたのか飲み込めないようだ。
「はあああああ!?」
「気づいてなかったのか。やはりな。」
アキタは遠くを見た。
「おそらく、ハヤトもだ。俺が入る隙はない。」
少し考えて、ツラヌキは言った。
「でも、本当なのか?」
「は?」
「アキタの思い込みじゃないのか。特にハヤトなんて、鉄道にしか興味ねぇじゃねぇか。」
「読み切れてないな。」
アキタは言った。いつもより寂しげだった。
「そんなはずはない。八月の初めに二人だけで京都に行ったと聞いた。上田は動画撮影を頼むときはいつも真っ先にハヤトに頼むし、ハヤトだって『嫌だ』と言いつつ、まんざらでもなさそうだ。」
「…………。」
ツラヌキは無言でスマホを手に取った。LINEを開き、トークルームから「アズサ」を選ぶ。
『お前がハヤトと付き合ってるって噂、本当か?』
十秒もしないうちに返事が来た。
『は!?何その根も葉もない噂!誰が言ったの?』
うさぎが怒っているスタンプが送られてきた。
「だってさ、アキタ。」
ツラヌキはスマホの画面を見せた。
「なっ……余計なことをするな!」
するとアズサから電話がかかってきた。
『ちょっとツラヌキ!さっきのライン、どういう意味よ!』
「悪りぃ悪りぃ、ちょっとアキタが気にしてたからよ。」
「おい!勝手なことを言うな!」
『アキタ?そういえばわたし、アキタに言いたいことがあるのよね。ちょっと電話かわってよ。』
ツラヌキはアキタにスマホを渡した。
『アキタ、この間はありがと。』
この間、アズサが熱を出したときのことだろう。
『わたしあの時、寝ちゃってたわよね。重かったでしょ。』
「いや、全然。」
アキタは正直なところを述べた。
『また隠しちゃって。いっつもそうなんだから、アキタは!』
一呼吸置いた後、アズサは一息に言った。
『いつも一人で悩んで!キャンプ行ったときも、アキタは一人で悩んでたよね。わたし気づいてた。アキタから相談してくるの待ってた。でも結局相談してくれなかったよね!?』
アズサは思っていた。アキタは自分のことを気にかけてくれた、アキタの背中は安心できたから寝てしまった、と。自分も何か見返りをしたい。アキタに安心してほしい。
『どーせまた、一人で悩んでるんでしょ。言いなさい!』
沈黙する。ツラヌキもこのときは黙っていた。
「ぶっ。」
アキタは不意に吹き出した。
確かに、もう誤魔化しても仕方ない。
俺は、上田が好きだ。
「上田。お前のおかげで吹っ切ることができた。あ……ありがとう。」
最後の方は気恥ずかしくて小声になった。
『へ?ああ、うん。アキタが元気になったみたいだし、良かったのかな?』

その一週間後、事件は起こった。
「ハヤトくん。」
ハヤトは振り返った。この声は……
「ミク!」
ミクが大宮支部の廊下に立っている。アキタ、ツラヌキ、シノブ、アズサも振り返る。
「なにしに来たの?」
「ハヤトくんに話があるんです。来てください。」
ミクはハヤトの手首をつかみ、反対側に歩いて行った。
「ミク、どうしたんだ?」
ツラヌキが頭の後ろで手を組みながら言う。
「さあな。」
「気になるな……。」
すぐにツラヌキは駆け出した。むろん、ミクたちが向かった方向に、だ。
アキタとシノブとアズサも追いかける。
「うわっと。」
ツラヌキが急に立ち止まる。
「わたし……ハヤトくんが好きです!」
ミクの声が聞こえた。
ええーっ!告白ーー!
と、シノブ以外思った。シノブは何がなんだかわからないでいる。
で、ハヤトの返事は……?
「俺も、」
静寂の中、ハヤトの震えた声が響く。
「俺も、ミクのことが好きなんだ。新幹線が好きっていうのとは、また違う感じだった。最初は何なのかよくわからなかったけれど、今はわかる。って俺、女子に言わせるなんて恥ずかしいなぁ。」
ということは…………。
アズサは耐えきれず駆け出した。両の目から涙がこぼれる。
「上田っ!?」
アキタも追いかける。
「……アキタの言ってたことって、半分当たってたのか?」
呆然とするツラヌキ、シノブだったが、すぐに気がついた。
「やべっ、ハヤトたちにバレちまう!早くずらかろうぜ!」
「……御意?」
状況が飲み込めず、疑問形でシノブは答え駆け出す。
「……今の話、全部聞かれていたようですね。」
「……だね。」
ハヤトとミクは赤くなった。そしてどちらからともなく吹き出した。

アズサの足は以外と速く、また闇雲に曲がるため、なかなか追いつけなかった。しかし格好が目立つため、見失うことはなかった。
やがて壁に突き当たり、アズサは左の部屋に入った。
「上田。」
追いついたアキタが入ると、アズサはしゃがみこんでしゃくりあげていた。
アキタはどう声をかけていいのかわからず、立ちつくしていた。
「……来ないで。」
アズサの絞り出した声が、かろうじて聞こえた。
「一人にして。……お願い。」
アキタは動かなかった。動けなかったのだ。こんな状態で、放っておけるわけない。
「お願い!」
強く言い放ち、振り向いたアズサの目と鼻は赤く、頰には涙がこぼれていた。
アキタは我知らず動きだしていた。
アズサを強く抱きしめた。
やがてぽつりと語り出す。
「……俺の好きなやつも、俺が自覚したときにはすでに他に好きなやつがいた。だから上田の気持ちはよくわかる。」
アズサは黙っていた。
アキタはアズサを離し、視線を合わせ言った。
「笑え。お前は人気JSユーチューバーなんだろう。お前がそんなんだと、俺も……いや、悲しむやつが大勢いる。視聴者の期待に応えるんだろう。」
アズサの瞳に光が宿る。
「……うん!」
「アキタ、上田っ!やっと見つけたぜ!」
そこにツラヌキとシノブが入ってきた。
「さ〜て、アキタ君は何をしてたのかなぁ?」
ツラヌキがわざとらしく、ニヤニヤしながら言った。
「別に何もっ……。」
「ああ、悪りぃ悪りぃ!いいとこなのに、邪魔しちまったか!」
「だから何もっ……!」
ありがとう、アキタ。
声にこそ出さなかったが、アズサは想っていた。

「アキタ。お前、アズサに告らねぇのか?」
夏休みも今日で終わりという、日曜日。午前九時。
アキタはこれまでにアズサがあげた動画を見ていた。体を起こす。
「な、何をいきなりそんなこと……。だいたい、迷惑だろう。」
「んなことねぇよ。アズサがハヤトにフラれちまったことは明白だし。」
ちなみにツラヌキがアズサを名前呼びするのは、アキタを焦らすためだ。
「それとも、自信がねぇのか?全くもって臆病なやつだぜ。」
「なっ……!そんなことない。なんなら、今から告ってやる。」
アキタは言ってからしまったと思った。完全にはめられた。ツラヌキがニヤリと笑った。
「言ったな。」
ツラヌキはアキタが口出しする暇もなく、アズサに電話した。
「もしもしアズサ?今出られっか?……おう、じゃあ、大宮駅の前で待ち合わせな。」
そう言って、電話を切る。
そして真っ青になっているアキタの背中をバンバン叩いた。
「言ってこい!フラれたら、慰めてやるからさ!」
「……フラれる前提で話をするな。」
かろうじて言い返したものの、顔とは違って頭は真っ白だった。
「ほらほら、待ち合わせは二十分後だぜ。遅れたら、フラれちまうぞ?」
ピクリと反応した。遅れてフラれるなんて、アキタのプライドが許さない。
「……行ってくる。」
「おう!頑張れよ!」

しかしいざアズサを目の前にすると、さすがのアキタも緊張してしまう。
五分程経過して、アズサがしびれを切らした。
「ちょっとアキタ!言いたいことがあるなら、はっきり言いなさいよ!わたしだって、暇じゃないんだからね!」
「……好きだ。」
アキタが絞り出せた声は、雑踏にかき消されてしまう。
「え?何?聞こえな……もう一回言って?」
今度は丹田に力をこめた。
「好きだっ!」
道行く人が、何事かと振り返る。それでもかまわず、アキタは続けた。
「お前がハヤトを好きなのは知っていた。それでも止められなかった!……俺はお前が、好きなんだ。」
周りから冷やかしの声があがる。アキタは気にしなかった。アズサの返事を待つ。
やがてアズサは口を開いた。
「わたし、ハヤトなんて好きじゃないから。」
そっけない声が聞こえた。顔を上げると、声とは裏腹に優しい笑みのアズサ。
「そりゃあ、前は、そうだったけど……。でもわたし、アキタの優しさを感じて気づいたの。わたしが本当に好きなのは、アキタだって。」
アズサはアキタの手を引いた。
「さ、行こ!わたしのオススメのスイーツショップに、案内してあげる!」
晴天の下、手を繋いで歩く二人は、とてもお似合いだった。

あとがき

初めまして、浅間燈架です!今回は、僭越ながら、ssを書かせていただきました!
さて、なぜこの組み合わせになったのかというと…………まあ、単純にこの二人が好きだったからですね。勢いで話書いて、長すぎるから削って、こんな感じです。
で、お願いがあります。
どううううっか!アキアズのイラストを描いて下さいいいいっ!
……お願いします。
あと感想は、「占いツクール」というところに書けるとこ作っとくので、お願いします。リクエストもあったら書いて下さい。まあ、小説しか書けませんが。それに、次はこの小説でも出てきた、ハヤミクを書くので、リクエストに応えられないかもしれません(−_−;)無責任ですいません!
最後に。ここまで読んで下さり、ありがとうございました!わたしは、シンカリオンが大好きですっ!
2018年12月16日 浅間 燈架

powered by crayon(クレヨン)